株式会社なかせ農園さま突撃インタビュー
売上およそ4倍アップ!売上2,000万円から7,000万円への道のり!
クロスエイジと歩む農業経営と組織づくりについて
数々の問題点を抱えていると言われている日本の農業。
雇用型農業であれば誰しも一度は「組織づくり」に悩むことがあるのではないでしょうか?
そこで本記事では、売上7,000万円以上の大規模農家として熊本県大津町でサツマイモを栽培している株式会社なかせ農園の代表・中瀬 靖幸さんに「売上げアップの秘訣と、農家の組織づくり」についてお伺いしました。
目次[非表示]
- ・Q1.法人化したきっかけと売上規模、当時の状況を教えて下さい。
- ・Q2.売上5,000万円~6,000万円を突破したとき、どんなことをしていましたか?
- ・Q3.売上7,000万円を突破したとき、どんなことをしていましたか?
- ・Q4.売上を伸ばし、成長できた秘訣は何ですか?
- ・Q5.雇用型農業で組織づくりをするときのポイントはありますか?
- ・Q6.働きやすい環境を整えるための具体的な取り組みを教えて下さい!
- ・Q7.障害者雇用をされているとのことですが、その点で工夫・実践していることはありますか?
- ・Q8.障害者雇用をされる中で、特に意識したことはありますか?
- ・Q9.これから売上1億円を突破し成長するために必要なことは何ですか?
- ・Q10.売上向上のために施策を打ちましたか?
- ・Q11.農業経営者様がステップアップするために、何が必要だと思いますか?
- ・Q12.農業経営者様に対してのアドバイスを一言お願いします。
農家さんの
\ 「農業経営と組織づくりの疑問」にお答えします! /
Q1.法人化したきっかけと売上規模、当時の状況を教えて下さい。
A.当時の売上は1,500万円。6,500万円分の投資を回収するためにサツマイモ専業農家へ。
法人化をしたのが2017年で、当時は売上1,500万円〜2,000万円からのスタートでした。
もともと父が30年ぐらい個人でサツマイモや大根、里芋など、複数栽培をしており、その中で、それぞれ時期をずらし少しリスク分散をしながら経営をしていました。
法人化のきっかけは、2016年の熊本地震での被災です。
復興のための施設の資金調達上、法人化をして融資や出資を募る必要があったんです。
実際、法人化する前からクロスエイジさんには、法人化のメリットデメリットなどもご相談させていただいていました。
ただ、こちらも踏ん切りがつかなかったり、すぐにやらなくてもいいのかなって思ったりしていたんですけど、そうも言ってられない状況になったので、また退路を断った上での、融資や法人化への道っていうのをスタートさせた状況でした。
当初2,000万円の売上規模の中で、その時サツマイモの貯蔵庫に6,500万円ほどの投資をしました。
身の丈以上の投資になったので、絶対的に売上を伸ばす必要性があったんです。そのためには、貯蔵庫の稼働率を上げる必要性がありました。そう考えると、他の作物を作るよりサツマイモ一本に絞って面積を増やしていく方が効率も良いことに気づき、サツマイモに注力しました。
今思うと、結構リスクを背負う大きな決断だったなと思います。
Q2.売上5,000万円~6,000万円を突破したとき、どんなことをしていましたか?
A.全量市場出荷から全量直販への切り替え。出荷の効率化と脱属人化。
貯蔵庫へ身の丈以上の投資を行ったため、今まで以上に利益を出さなくてなりませんでした。
そのために単価アップと反収アップが必要不可欠でした。ですが、市場出荷では単価交渉も難しく、出荷作業も43規格を手で仕分けをしなければならなかったため、コストが掛かっていました。そこで、前職で身につけた営業力を活かし、一部クロスエイジさんにもご協力いただき、全量直販への切り替え、43規格を9規格まで減らしました。さらに、機械を導入し誰でもできる出荷形態にすることで、出荷効率を上げる決断をしました。
例えば、出荷時に秤に乗せてサツマイモの重さを量る作業。
その秤に乗せた重さと、曲がりの大小によって等級を分けるんですけど、規格を減らす前は43通り、すべて手で仕分けをしていて、1コンテナで終わらせるのに結構時間が掛かっていました。
ですが、9規格に簡素化し重量を選別する機械を導入して、プロ農家がやらなくてはならなかった属人的な作業を誰でもできる出荷形態を組むことで、ボトルネックになっていた出荷過程が簡略化されました。そしてまた面積を増やすことができた感じです。なので、できることを機械化することで、農家さんがやらなくてもいい作業をどんどん効率化し、脱属人化していくことが大事だなと思います。
そして貯蔵庫を建てたことで通年供給できる体制ができ、焼き芋ブームによる通年出荷の需要増に対応できたことで単価を高く販売することができました。
また、土壌医検定などを自分やスタッフも取得し、土壌環境に合わせた肥料設計などを行うことで反収アップを図りました。
Q3.売上7,000万円を突破したとき、どんなことをしていましたか?
A.財務分析や事業分析に力を入れました。
農業界では、「畑に行くことを大事にすべき」という考え方があり、それも非常に大切だと思っています。しかし、現場作業は現場責任者の方がやることです。
経営者が守るところは、その経営体をいかに持続させるかという点だと思っています。
農業は資本がかなり小さく弱い産業だと思うので財務面、特に資金繰りや収益性がどうすれば上がるのかを考える必要があるかなと思っています。
自分たちの立場や市場での需要のバランスをみて、持続可能な単価交渉ができるよう調整したり、自社の財務状況・市場が見えてないと、毎年同じ単価または値下げ交渉されたりしてしまうので、それに応えてしまうと、結果的に農業が続けられない状況になってしまいます。
そうならないために、今どこにいて何をすべきなのかっていうことをちゃんとした分析の専門家を交えたり、ツールを使った上で分析することが大事だなと思っています。
特に、クロスエイジさんは持続可能な単価で売ってくれて産地が疲弊して付き合えなくなる事態を避け、長い目でお付き合いしてくださいます。クロスエイジさん視点で言えば、もっと大きく収益が出せる産地もあると思うんです。
Q4.売上を伸ばし、成長できた秘訣は何ですか?
A.やらないことを決めること。インプットを常に意識すること。
当時の売上(2,000万円)の3倍(6,000万円)稼がなければいけない状況で、作業スピードを3倍にする必要がありました。そのため、自分たちでやらないことを決めたんです。
例えば、作業は社員さん・パートさん、または業務委託の方などの外部へ依頼する選択肢を取ったことで、成長スピードがグンと速まりました。それらを浪費と考えるのか、投資と考えるのかでかわってきます。
また、あとは、中小企業診断士の方に事業性分析を作っていただいたり、経営力向上セミナーに参加したり、ビジネス系のオンラインスクールに通ったり、インプットを常に意識していました。資本力も弱く、災害リスクなどに左右されやすいこの業界では特に必須だと思いますし、知識を常に取り入れる意識でいないと危険です。
Q5.雇用型農業で組織づくりをするときのポイントはありますか?
A.どうしたらうちで働きたいと思ってもらえるかを考えながら、スタッフが働きやすい環境づくりに注力しました。
まず、自分たちではできないことを割り切って考えること、スタッフの方にいかに続けてもらうのかを考えますね。労働者ではなく、労働力という能力を貸してもらってるパートナーという考え方です。
雇用する側の立場が上という考え方をまず捨てて、その方々がいかにここが働きやすいかと思ってもらえるための仕組みを考えます。
Q6.働きやすい環境を整えるための具体的な取り組みを教えて下さい!
A.休みのとりやすさ、公正な評価制度の導入。
スタッフが働きやすい環境を構築するために行っていることは、大きく分けて2つあります。
1つ目は、休みを取りやすかったり、希望出勤日を出しやすかったりすることです。
「jinjer(ジンジャー)」という勤怠管理システムを入れたり、「Time Tree(タイムツリー)」というスケジュール共有アプリで希望出勤日を提出してもらったりしています。
2つ目は、公正な評価制度とマニュアルを作成することです。
組織作りをするにあたって、評価制度とマニュアルをクロスエイジさんに作っていただきました。
例えば、昇給タイミングに関しては今まで明文化されていなかったので、頑張りたい人が頑張りにくい環境だったのかなと思います。
「何かこの人頑張ってるからいいよね」という曖昧な判断ではなく、もう少し定量的に指標で示せると、役員内での合意が取りやすいと思ったんです。
評価制度を見える化して公正な形が取れると、スタッフのモチベーションにも繋がります。
スタッフ面接のときに制度の話をすると、面白そうと思って入ってもらえるでしょうし、また入ってきた方も仕事が分かりやすく、見える化されていてやりやすいなと思ってもらえると思うんです。
クロスエイジさんにマニュアルも整備していただいたので、新しく入ってこられる方に対して大きなインパクトがあるのかなと思ってます。
より良い組織作りのために、スタッフの方々の力を貸していただいてる、上下関係でないフラットな関係性を意識しています。
Q7.障害者雇用をされているとのことですが、その点で工夫・実践していることはありますか?
A.年間を通した業務を図表にして誰もが分かりやすい形を作成しました。
年間を通した仕事を図表にしました。そうすることで、ベテラン・若手・障害者の方関係なく共通認識を持つことができます。
うちは特に、障害をお持ちの方が多く働かれています。彼らが混乱しないように業務を整理して見える化すれば、パフォーマンス力が上がって、結果的に社内の生産性もグンと上がることが分かりました。明文化・言語化して提示することが結果的にその経営を持続させることに繋がると思っています。
熊本県にも障害をお持ちの方がたくさんいらっしゃって、働く場所が限られているので、そこの受け皿になれるような農業形態でありたいです。
Q8.障害者雇用をされる中で、特に意識したことはありますか?
A.専門家を招いて知的障害について学ぶ研修を実施しました。
心理士の先生を招いて、健常者も障害者も双方を理解する勉強の場を設けました。
障害者である彼の障害特性と得意・不得意なことを理解して全体での共通認識を持てるようになったので、健常者側からのサポートを提案できるようになりました。
専門性を持った方を招いて座学で学習できたので、彼らの要望を汲み取れる職場に近付いたと思います。彼の心理的負担を少しでも減らして、誰でも働きやすい環境を整えたいです。
Q9.これから売上1億円を突破し成長するために必要なことは何ですか?
A.7割の専門性と3割の客観性を持って経営すること。
7割の専門性と3割の客観性を持って経営することが重要だと思います。専門性に特化したことを繰り返し行うと自分にしかできないことばっかりになってしまうので、事業拡大は難しいなと感じています。
やはり3割ぐらいの第三者的な考えをもって分解して単純にするのが大切だと思います。
Q10.売上向上のために施策を打ちましたか?
A.商品力を上げるため、データ分析を行いました。
まずは、商品の品質向上に力を入れるべきだと思っています。
そのためにはデータ系の出荷数や、大きさなどの数値的な分析、品種選択からの経営戦略を練ることが重要です。
単純にデータを取るだけでなく、それをどう組み合わせて分析すれば、欲しいデータが出てくるかをクロスエイジさんのもとで学ばせていただいています。
ここ最近、データを取る農家さんは増えてきてるのかなと思うんですけど、結局それをうまく活用できないと何の価値も生まないですし、ただデータを取るコストだけが掛かってしまってもったいないんです。
私たちは、クロスエイジさんのデータ分析ツール「スター農家クラウド」を使って、採算が取れてる規格を確認しています。なので、データを見てどこに注力すればいいかの経営判断を行います。多岐に広げていくよりも、やらないことを決めることが大事なので、「スター農家クラウド」を取捨選択のためのツールとして使わせていただいています。
Q11.農業経営者様がステップアップするために、何が必要だと思いますか?
A.「やるしかない」という気持ちと、あえて退路を断つ勇気が必要です。
2,000万円の売上当時、売上6,000万円~7,000万円まで到達することが現実的にイメージできなかったですし、ましてや今の3倍の売上を出すなんて絶対無理と思ってました。
でも、売上高を上げなければいけない、やらなければいけない状況になったとき、いかに自身に負荷をかけられるのかが大事だと思います。私の場合は災害や融資がきっかけでしたが、いかに自分で退路を断つのかだと思います。
Q12.農業経営者様に対してのアドバイスを一言お願いします。
A.自農園が何を大切にしているか、スタンスを見せることが大事だと思います。
「何を大切にしているのか」を明らかにすると良いと思います。
私たちは、「一番立場の弱い人を守る」ということを大事にしていますが、それを第三者にも分かるように意識しています。私たちの場合でいう弱い立場は、障害をお持ちの方が該当します。以前、障害を持った方が「辞めたい」と言ってきたことがあったのですが、後にコミュニケーション不足で相互理解できていなかったことが原因だと気付きました。そういった方も安心して働ける場を作りたいと思っています。
売上7,000万円以上の大規模農家として熊本県大津町でサツマイモを栽培している株式会社なかせ農園の中瀬 靖幸さんから「売上げアップの秘訣と、農家の組織づくり」についてお伺いしました。
熊本地震の復興から5年。売上2,000万円の個人農家から今や売上7,000万円を超えるサツマイモ専業農家として確かな歩みを進めています。
そこには、当時からクロスエイジと一緒に歩んできた軌跡があり、インタビューからは双方の信頼関係が垣間見れました。
中瀬さんの「障害者雇用」への想い、スタッフ全員が働きやすい環境づくりのお話からは、日本の農業を明るく照らすモデルケースとしての輝きを感じられました。
中瀬さん、貴重なお時間をありがとうございました。