株式会社 平凡野菜さま突撃インタビュー
【売上6,000万円】神奈川県でレタス栽培。
クロスエイジと歩む差別化農業。
新規就農から着実に積み上げ、法人化して6年で売上6,000万円を達成した平凡野菜さま。
規模拡大のみではなく、従業員ファーストで働きやすい環境づくりにコツコツと取り組んできました。
そして、GAP審査では満点を獲得。代表によると、従業員の皆さんの満足度が高まったことで、この結果に繋がったとのことです。
今回は、神奈川県横須賀市でレタスをメインに栽培している平凡野菜の代表・藤原信良さんに、「従業員が満足できる環境づくり」についてお話を伺いました。
目次[非表示]
- ・Q1.就農のきっかけを教えてください。
- ・Q2.「平凡野菜」という社名には、どのような意味が込められていますか?
- ・Q3.法人化のきっかけを教えてください。
- ・Q4.法人化したときに力を入れていたことは何ですか?
- ・Q5.売上5,000万円を達成したときに工夫したことを教えてください。
- ・Q6. 50品目の野菜からレタスをメインとした数品目に厳選し栽培したそうですが、選定基準は何だったのでしょうか?
- ・Q7.PDCAを効率よく回すために工夫していることはありますか?
- ・Q8.藤原さんが考える、従業員との関係性の在り方を教えてください。
- ・Q9.GAPを取得しようと思った背景と取得してよかったことはありますか?
- ・Q10.農福連携を行っているとのことですが、現在の状況を教えてください。
- ・Q11.クロスエイジはどんな存在ですか?
- ・Q12.今後の、平凡野菜さんの展望を教えてください。
Q1.就農のきっかけを教えてください。
A.前職のコンサルの知識を活かした農業をしたい。
私の両親は兼業農家で、学生の頃には実家の稲刈りを手伝っていました。農業を身近に感じ始めたのはこのときからです。
また、20歳のときに農業を生業としている方と交流する機会がありました。専業農家さんの姿に刺激を貰い、より農業に興味を持ちました。
大学卒業後、コンサルの会社に就職。食品製造を支援する部署に配属され、商売を学びました。その中で、学んだことを活かしながら農業をやってみたいと思い、会社を退職して農業法人で5年間学んだ後に起業しました。
Q2.「平凡野菜」という社名には、どのような意味が込められていますか?
A.「毎日食べる野菜をつくる」がコンセプト。日々の食事を支えたい。
独立する際に、会社の武器となるようなアピールポイントがありませんでした。今までの経験を振り返ってみたとき、オーソドックスな製法で安定的に生産できることが強みだと気づきました。
「ごく当たり前=平凡」、つまり日々の食事を支える野菜を提供するという意味も込めています。
「平凡」と表現したことで、初めて社名を見た人に興味を持ってもらえるので、非常に気に入っています。
Q3.法人化のきっかけを教えてください。
A.規模拡大と働きやすさを追求。正社員を迎えられる環境を。
法人化したきっかけは、従業員の雇用を安定させたかったからです。
法人化する前はパートさんが5~6人のみ。パートさんは限られた時間の中でしか働けないので、家族労働でまかなっている状態でした。今後規模を拡大するためにも、正社員を1人入れたいと考えたのです。正社員を雇用するなら社会保険など待遇を整えたいと考え、法人化に踏み出しました。
Q4.法人化したときに力を入れていたことは何ですか?
A.「平凡野菜」をもっと広める、こだわりが詰まったパッケージを作成。
法人化する前から力を入れていたことは、ブランディングです。
「平凡野菜」を多くの人に知ってもらうために、野菜ごとに栽培方法を付けたパッケージを一つ一つ作成。青果担当の方がスーパーの棚に置きたいと思ってもらえるように意識しました。実際に青果担当の方から「売りやすい」とお褒めの言葉をいただきました。他の農家さんと差別化できたのがよかったです。
Q5.売上5,000万円を達成したときに工夫したことを教えてください。
A.まずは会社の制度を整えることから。できることからコツコツと積み上げる。
創業3年目まで(売上1,000万円)は、レタスだけではなく、多品目の野菜を栽培していたんです。圃場の数が多くて手が回りきっていませんでした。
だからこそ、レタスメインの栽培体制に切り替える決断をしました。
他にも、従業員の制度を整えました。正社員の人数がパートさんより少なかったので、労働力が不安定でした。労働力を安定させるため、クロスエイジさんからの紹介で外国人労働者さんに作業をお願いしました。
出荷先に対しては、平凡野菜の強みをアピールしました。取引先であるカット工場では安定的な出荷が重視されています。平凡野菜はその日に収穫してすぐに出荷できることが強み。鮮度や歩留まりの高さを売りにしました。少しずつリピートしてもらえるようになりましたね。
Q6. 50品目の野菜からレタスをメインとした数品目に厳選し栽培したそうですが、選定基準は何だったのでしょうか?
A.地元ブランドとして売り出せる品目を選定。
神奈川県では大根やキャベツの生産は多いですが、レタスの生産はほとんど進んでいませんでした。だから、産地としての出荷基準が設けられておらず、「平凡野菜のレタス」として融通を利かせられるのです。レタスを栽培すれば「地元ブランド」として売れるのではと思い、レタスをメインにしていくことに決めました。
しかもレタスは、育てる際に必ずマルチ栽培をします。マルチ栽培は荒れた土地でも栽培できる上に、雑草が生える面積が少なくなるので、除草作業が減るメリットがあります。従業員の負担軽減にもつながると考えました。
Q7.PDCAを効率よく回すために工夫していることはありますか?
A.従業員みんなが意見を言い合える環境。各々が目標を意識しながら働く。
PDCAを効率よく回すために3つのことを実践しています。
1つ目は、ITツールに記録して情報の共有です。栽培などの記録を残すために、最初は事業主のみで日報をつけていました。しかし、項目分けをしていなかったため、欲しい情報を探すのが煩わしく、他の方法で記録を残そうと考えました。
周囲に相談した結果、ITツールを試してみることに。項目ごとに記録を貯めることで、全員が情報共有できるようにしました。少しでも従業員の負担を減らすように意識しています。
2つ目は、週一回の会議です。全員で集まって課題を洗い出す場を設けています。会議中に新しい案が出ることも。どんどん課題が改善されていき、従業員も仕事にやりがいを感じて良い循環が生まれます。
3つ目は、課題や年間のスケジュールをホワイトボードに貼るなどの見える化です。目につく場所に設置することで、課題などすぐに話し合えるように工夫しています。
Q8.藤原さんが考える、従業員との関係性の在り方を教えてください。
A.従業員ファーストで考える。多くの人に農業をもっと身近に感じてほしい。
できるだけ従業員が描いている会社像に合わせていきたいと思っています。
はじめは、自分が頑張っている姿を見せて士気を高めようと考えていました。しかしそれでは従業員が疲れてしまうし、このスタンスを続けていけば人材不足になってしまいます。今は個人の意見を尊重する時代。人材確保のためにも、可能な限り待遇面を整えています。
Q9.GAPを取得しようと思った背景と取得してよかったことはありますか?
A.誰でも働きやすいように。職場の環境を整えることがきっかけでGAPを取得。
GAPを取得しようと思った理由は、会社を良くしていくために必要だからです。GAPを取得するには様々なリスクを洗い出し評価する必要があります。
例えば、異物混入のリスクを減らすことや怪我をしにくい環境であるなど。細かいリスクを一つひとつ解決していくことで自然と職場環境がよくなります。
新しく入った社員にとっては、畑やトラックに番号が振られており、分かりやすくてストレスがだいぶ減ります。
きちんと職場環境が整っているといった目に見える働きやすさはもちろんですが、働く上での利便性も重視しています。
Q10.農福連携を行っているとのことですが、現在の状況を教えてください。
A.障がい者さんも楽しく農業を。農福連携で作業の効率化アップにも繋がる。
現在は特例子会社に作業をお願いしています。具体的には、種まきや収穫後の畑の片付けなど、形式化している作業を中心に依頼しています。。
作業をマニュアル化しているので、障がい者の方々から「作業がやりやすい」と言ってもらえました。以前から障がい者さんが働ける場を作りたいと思っていたので、農福連携を取り入れてよかったです。
Q11.クロスエイジはどんな存在ですか?
A.様々なスター農家さんと出会う環境を提供してくれる。成長のキッカケにも。
神奈川県は農業があまり盛んではないので、農業法人が周りにほとんどありません。売上3,000万円を達成したとき、この後何をしたらいいか見通しが立たず困りましたね。自分がもっと輝かしい経営者であり続けるために、目標となるような農家さんと出会いたいと思うようになりました。
そんなときにクロスエイジさんと出会って、様々な農家さんを紹介してもらいました。他県の事例を参考にすることもできて助かっていますし、モチベーションアップにも繋がっています。
Q12.今後の、平凡野菜さんの展望を教えてください。
A.これからも従業員を大切に。農業の楽しさをもっと知ってほしい。
農業をこれからも続けていくために、業界全体の「価格転嫁できない構造」から脱却したいと考えています。そのために、農業と親和性の高い加工や販売にも挑戦したいです。
また、レタスの栽培する種類を増やしていきたいです。同じことをし続けるのではなく、ブラッシュアップしていきます。
そして引き続き、従業員ファーストで経営していきます。ただ栽培した野菜を出荷するだけでは、だんだんとやりがいがなくなってしまいます。消費者の声を従業員と共有してさらに農業への熱量を上げたいですね。従業員と共に、常により良い野菜を栽培していきたいです。
ゆくゆくは、農業のイメージを変えるのが目標です。農業に対し、「毎日休みなく働き続ける」印象を抱く方が多いのではないでしょうか。長時間、重労働に耐えるというイメージを払拭し、もっとカジュアルに。農業を職業の選択肢の一つとして気軽に考えられるような、そんな社会の実現に貢献していきたいですね。
神奈川県では大根やキャベツの生産は多いですが、レタスの生産はほとんど進んでいませんでした。だから、産地としての出荷基準が設けられておらず、「平凡野菜のレタス」として融通を利かせられるのです。レタスを栽培すれば「地元ブランド」として売れるのではと思い、レタスをメインにしていくことに決めまし常に細かな気配りで従業員の立場になって考える藤原さん。「農業を楽しくやりたい」と仰っていました。楽しく農業ができる仕組みを考えてトライし続ける。人を大切にしているからこそ従業員の満足度も上がり、売上5,000万円達成という結果につながったと思います。
藤原さん、今回は貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。
(執筆:吉野朱美 /編集:林春花・ひのりほ)