スター農家ラボ(ブログ)

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株式会社石ノ森農場さま突撃インタビュー

サラリーマン経験0から就農し法人化。
稼げる仕組み作りに向けて取り組んだ工夫とは?


平成26年に法人化された株式会社石ノ森農場さま。
代表の山内健太郎さんはお父様から代表を継ぎ、水稲のみならず園芸やきゅうり栽培にも取り組みました。サラリーマン経験がない中での法人化は、社会通念を理解するためのきっかけとなったとのこと。

今回は、山内さんが代表を継いでから工夫したことや取り組まれたことなどを通し、農業法人を運営するうえでのヒントとなるお話を伺いました。

目次[非表示]

  1. Q1.就農のきっかけを教えてください。
  2. Q2.就農当時の取り扱い品目や売上を教えてください。
  3. Q3.法人化当時の課題を教えてください。
  4. Q4.きゅうりを栽培するようになった背景は何でしょうか?
  5. Q5.どのような社員を採用していますか?
  6. Q6.販路を分散させた理由を教えてください。
  7. Q7.クロスエイジはどんな存在ですか?
  8. Q8.山内さんの今後のビジョンと代表として目指す姿を教えてください。

Q1.就農のきっかけを教えてください。

A.実家の農家を継いだ。

農家を営む父親とサラリーマンの母親の次男として生まれました。兄は家を継がなかったので、自動的に私が事業継承する形となりました。当時は水稲だけではなく畜産も行っていました。

元々私にはそれほど就農したい意欲はありませんでした。しかし、ゆくゆくは私が家を継がなければならないといった差し迫った気持ちもあったため、高校卒業後は農業系の大学に進学、その後就農しました。同期のほとんどは会社に就職する中で、私には会社経営に関する知識がなかったため当初は不安でした。
若い頃は視野も狭く、「農業=父親」のようなイメージがありました。私は父親に対して正直あまり良い印象を抱いていませんでした。サラリーマンは仕事をする時間や業務内容もはっきりしていますが、個人農家はそれぞれのライフサイクルがあり、謎めいていました。父親の働きぶりが見えない中で育ってきたことも、積極的に就農したいと私が思えなかった理由のひとつだと思います。とはいえ、長男である兄が完全に実家を出ていってしまったため、「私がなんとかしなくては」という責任感があったのだと思います。

Q2.就農当時の取り扱い品目や売上を教えてください。

A.園芸に注目し、就農1年目で売上を立てる。

就農当初は数ヶ月ほど父親と2人で作業をしていましたが、ソリが合わないと気づいたんです。父親は水稲と畜産を中心に行っており、具体的にどこのどういった作業を任せるのかといった、二人体制での経営を進めるにあたっての準備を行っていないようでした。

彼が1人でやっているところに今更私が入っていくのは意味があるのかなと感じました。私がやったほうが上手くいくと就農1ヶ月で思ったくらいです(笑)。それをきっかけに私は園芸に着手するようになり、結局初年度から自営業としてスタートを切りました。

園芸を選んだ理由としては、とにかく自分で事業をやってみたいという気持ちがあったためです。資金がない自分でもできることは何だろうと考えた結果、水稲の育苗に使っているパイプハウスに着目しました。また、周辺地域が切り花の産地だったため、手軽に生産者と情報交換ができたことも助かりました。園芸を始めるにあたって環境に恵まれていたのだと思います。

初年度の売上は園芸部門で400~500万円ほど。さらに父親の水稲も手伝っていたためその収入もありました。その後、就農から10年ほど経った平成26年に父親から事業を承継し、法人化して私が代表に就任しました。社長になった当時の私は若さゆえの根拠のないやる気と向上心でいっぱいでした(笑)。

Q3.法人化当時の課題を教えてください。

A.サラリーマン経験がなかったため、労働者の求めるものを理解すべく世間の常識を必死で学んだ。

法人化の理由は規模が大きくなったためです。私1人では到底出来ないと思うようになり、従業員を雇うことになりましたが、いかんせんサラリーマン経験がなく、これまで個人事業主だったため、世の中一般の常識が全く分かっていませんでした。

自分ひとりで事業を興すのであれば、全て自分自身で好き放題にコントロールできます。しかし、人を雇うとそれができない。例えば労働時間に関して言えば、個人事業主時代の私は朝4時から翌朝4時までぶっ通しで働いたこともありました。当然ですが雇われる側としてはそのような働き方は求めていません。初めて採用を行った時に世間とのギャップに気づき、カルチャーショックを受けました。

労務などの会社の管理部門について本を読んだり、会計事務所の担当者と話をするなど、積極的に世間の常識を吸収するようになりました。

Q4.きゅうりを栽培するようになった背景は何でしょうか?

A.経営不振で廃業する大規模農家の事業を引き受けた。

これまでは農地を最大限活用して穀物をメインに栽培する土地利用型農業にプラスして園芸を行っていました。加えて、平成28年よりきゅうりに着手しました。その背景としては、市内の大規模農家が経営継続できなくなり、当社がきゅうり栽培の話をいただいたことがきっかけです。きゅうりの栽培方法など全く分からなかった私でしたが、二つ返事で快諾しました。仲間や家族からも反対されましたが、私は突き進みましたね。反対されるとやってしまう性分があるのかもしれません(笑)。加えてこの地域は国指定のきゅうり産地のため、「やっぱりきゅうりでしょう」といった気持ちも捨てきれなかったです。

きゅうりの栽培では、国内では珍しく温度・湿度・CO2などのコントロールを行う「複合環境制御」を取り入れたいという想いが強かったです。設備投資額が高くなりつつある現在では、80a以上の農地でないと費用対効果が見込めません。数々の農家の事例を見るとどのくらいの収益を上げられているのか分かりました。導入した結果、生産性を高められたものの、全てをコンピューターによってコントロールできるようになった反面、パートのスキルアップが厳しくなってしまいました。どこまでの業務を人に任せるべきかを試行錯誤しています。

きゅうりを栽培するきっかけは大規模農家の経営不振でしたが、今後も地域では似たような農家が出てくると思いますが、積極的に引き受ける予定です。社名である「石ノ森」とは地域の名称ですが、石ノ森という名前がつく場所の農業は私たちが行うと元々公言していることもありますね。

栽培品目に対するこだわりは特にありません。どのような品目を取り入れたとしても結局課題にぶつかります。課題を一つずつクリアしていくことこそ、農家の仕事なのだと思っています。


Q5.どのような社員を採用していますか?

A.創業理念に共感してくれる人。とはいえ、不採用にしたことはない。

一般に求人を出すこともありましたが、農大を通した採用も行っていました。就職マッチングセミナーにブースを出すなど継続的に参加していました。なお、周辺農家での採用はハローワークがメジャーな手段のようです。

会社設立前夜に書いた創業理念があり、それに共感してくれる使命感を持った方と一緒に働きたいです。当時の私としての正直な気持ちが理念には込められているのですが、実際に経営してみると現実を知っていくわけでして。今は従業員に使命感をどう持たせるか考えています。

石ノ森農場の面接で不採用になった人はいません。会社を始める段階では従業員がある程度必要なので、来るもの拒まずで採用していました。令和2年まで積極的に従業員を採用していましたが、現在は従業員をブラッシュアップすべく、私がいなくても経営が成り立つように幅広い業務を少人数で回せるようにしています。

ちなみに2021年まで従業員は誰も辞めませんでした。クロスエイジの藤野さんのコンサルティングを受けたところ、「皆居心地が良すぎて緩くなっていて儲からないため、これは良くない現象ですね」と言われてしまったくらいです(笑)。

Q6.販路を分散させた理由を教えてください。

A.収益性を重視したため。

リスクヘッジを考えたのと収益性を重視したため販路を分散させました。現在、自ら販路開拓を行っています。価格とコストは計算できて、どれくらいの売上が欲しいかというのも想像できるため、状況を見込んで互いの状況を加味したコミュニケーションがとれる顧客とお付き合いしています。

彼らとコミュニケーションをする上で、長い目で見ることを意識しています。とりわけ生花業は相場が乱高下しやすいです。相場を見れば別の業者に出荷した方がベターな場合であっても、最初にお互いに落とし所をつけて決めた単価を維持した方が結果的に会社の利益に繋がりやすいです。目先の利益に気を取られることもありますが、ずるいことをしない、それが第一です。

Q7.クロスエイジはどんな存在ですか?

A.困った時にまず最初に思いつく相談先。

元々クロスエイジの藤野さんとは飲み会で何度か関わりがありました。親交を深めるうちに彼の事業に誘われてコンサルティングを受けることに。今は知り合ってから5年ほど経っていますが、コンサルティングを受けることによって、園芸の成功事例を教えていただくだけではなく、クロスエイジのクライアントを訪問するなど、儲かっている農家が取り組んでいることを知れて視野が広がりました。

クロスエイジは困っている時に真っ先に頭に浮かぶ相談先のような存在です。農業は業界が狭いため、総合的な知見を持っている人はなかなかいません。その点、藤野さんは心強いですね。私にとって藤野さんは頼れるお兄さんのような存在です。同い年なので「お兄さん」ではないかもしれないですが(笑)。

Q8.山内さんの今後のビジョンと代表として目指す姿を教えてください。

A.自分たちがいなくなっても残る会社にしたい。

子供のような夢ですが、2桁億の売上を目指したいです。というものの、その目標に向けて行動していることはなく、日々やるべきことを忠実に続けていればとんでもない所に到達するのではないかと思っています。

何よりも、家業から法人化したといえ、未だに山内家の血筋が濃い会社のため、山内家が途絶えても残る会社を作れるよう組織化したいですね。


企業に勤めた経験がない中、大学卒業後には早くも父の家業を継いで、新規事業である園芸で1年目から売上を立てました。24時間通しで仕事をしていた過去もあったほど、売上のために粘り強く目の前の業務に取り組む姿勢があったからこそ、従業員も積極的に石ノ森農場に携われているのでしょう。

山内さん、今回は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

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(執筆:柴萌子/編集:ひのりほ)

スター農家クラウド編集部
スター農家クラウド編集部
スター農家クラウド/Web編集メンバー

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