スター農家ラボ(ブログ)

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株式会社れんこん三兄弟さま突撃インタビュー


農業の未来を担うれんこん農家の経営術とは?


2010年に法人化された株式会社れんこん三兄弟さま。代表の宮本貴夫さんはお父様から事業を承継し、毎年10~15%ほどの売上を伸ばし、今期は売上2億円超の予定となっています。
売上を伸ばした背景には、圧倒的な差別化ができるれんこん作りや顧客との信頼性構築にあるとのこと。

今回は、宮本さんが就農してから工夫したことや取り組まれたことなどを通し、農業法人を経営するうえでのヒントとなるお話を伺いました。

目次[非表示]

  1. Q1.就農のきっかけを教えてください。
  2. Q2.御社のれんこんの強みを教えてください。
  3. Q3.どのように販路を開拓されてきたのでしょうか?
  4. Q4.組織づくりのために取り組んでいることを教えてください。
  5. Q5.クロスエイジはどんな存在ですか?
  6. Q6.今後のビジョンを教えてください。
  7. Q7.宮本さんご自身はどのような姿を目指していますか?

Q1.就農のきっかけを教えてください。

A.「農業=清貧」という世間のイメージを覆したかったため。

元々私は大学でスポーツ科学を勉強し、体育の教師として学校で働いていました。そのような中、自身が農業を営む家庭で育ってきたことを振り返る機会がありました。世の中の農家のイメージといえば「清貧」に近しいものがありますが、実際のところ私は農家の長男として生まれたものの不自由なく過ごし、大学まで通わせてもらいました。特段お金に苦労した家計状況ではなかったため、世間とのギャップを感じました。

そのイメージを覆すためにも、私は農業経営を通して「世間に根付く農家のイメージを変えていきたい」という思いを兄弟たちに共有しました。結果的にタイミングも合い、弟たちと実家に就農、父に栽培ノウハウを5年ほど教わり、れんこんに特化した生産販売を行えるよう法人を設立しました。

Q2.御社のれんこんの強みを教えてください。

A.土壌豊かな肌触りと多品種栽培、鮮度が強み。
弊社で栽培するれんこんは白い色合いが特徴的です。というのも、それは土が大きく影響していて、霞ヶ浦と利根川に挟まれた土地に農園が位置しているため、利根川が運んできた砂が堆積し、そのために艶やかな肌触りのれんこんを収穫できます。

また、れんこんにも品種があることをご存知でしょうか?全国で主に栽培されているれんこんは10品種ほどありますが、1経営体あたり3~4品種のれんこんを栽培しています。弊社では販売時期に合わせた品種の選定を行い、土づくりや計画を立てることで安定した収量を維持しています。
さらに、収穫後には関東圏へ翌日届けられるための鮮度を保てている点も強みのひとつだと考えています。れんこんは鮮度よく食べていただくことで風味や食感がより伝わりやすいです。

Q3.どのように販路を開拓されてきたのでしょうか?

A.顧客の口コミを通して広がっていった。

飲食店ではシェフや常連のお客様、知り合いの農家同士の繋がりから口コミで弊社のれんこんを発注いただくことが多く、飛び込み営業をしたことはあまりありません。5~6年で100店舗ほど開拓できました。コロナ前は200店舗ほど取引がありました。当時はれんこん農家が市場を介さず直接販売を行うこと自体珍しかったことも販路開拓が成功した理由のひとつだと思います。鮮度の良い弊社のれんこんは、飲食店の方々にも喜ばれています。
また、品質向上のための工夫などは、農家では当たり前に取り組んでいることで、なかなか取引先に伝えようという発想が生まれにくいと思いますが、弊社ではその点をしっかりと顧客にアピールすることで信頼を得られているように感じます。商談においても、私たち農家と顧客にとっての「当たり前」の感覚が異なるように思います。商談を重ねながらアピール手法を探ってきました。

何より、他のれんこん農家と差別化を図るためにも、品質や量において安定的なれんこんであることを伝え、そのポイントを着実に守りながらお届けしています。

Q4.組織づくりのために取り組んでいることを教えてください。

A.従業員の成長をフォローできる体制を整備。
現在の私は現場に入ることが少なくなり、社長業として資金管理や組織づくり、営業に注力しています。就農当初は弟たちと営業・経理・生産を分担して管理していました。
営業が功を奏した理由としては、質・量ともにバランスの取れた平均点以上のれんこんを作れていたためだと思います。バイヤーのその先にいる消費者がリピートして購入してくださることが大切だと考えたうえでのれんこん作りを行ってきました。

採用活動においては、リソースを費やすよう工夫を重ね、求職者からの応募数を増やすためにHPやSNSの拡充、取材対応など弊社の雰囲気を伝えるようにしています。弊社は小さな組織で密な関係が求められるため、採用時にはコミュニケーション能力を重視しています。また、将来的には管理職としてマネジメント側にも回っていただきたいため、指導力や先見性を持った方を中心に採用してきました。他にもミスマッチを防ぐべく入社前に研修期間を1週間作ることで、職業体験の場を作っています。入社後も面談をしながら、従業員の成長をフォローする体制を整備しています。

代表としての在り方という点では、従業員にとって話しかけやすい空気感を普段から気をつけています。何気ないことでも相談できる雰囲気を作ることが大切なので。厳しいことを言う役割は、常に生産の現場を見ている弟に任せています。
最近は普通の中小企業のような感覚で経営していると思います。「農家をやっている」と「農業経営している」では大きな違いがあるでしょう。6年で3倍の規模感へと成長しました。以前は頼まれたことに対して対応していましたが、会社の先を見据えて逆算した後に進む方向を計画するようになってから変わり始めました。

Q5.クロスエイジはどんな存在ですか?

A.頭の中にある経営上のモヤモヤを、独自のフォーマットをもとに落とし込んでくれる存在。

クロスエイジさんは、私の頭の中でモヤモヤしていたことをはっきりと言語化してくれて、目指すべき方向へとサポートしてくれる存在です。いつも腑に落ちる言葉をくださるので、従業員にも共有しやすいです。
また、藤野さんとは経営者仲間のため、従業員の育て方について語り合うなどお互いの経験談に基づく踏み込んだ話もさせてもらっています(笑)

Q6.今後のビジョンを教えてください。

A.投資として資金を使わなければ会社は成長できないし、魅力的にもなれない。

少子高齢化の影響もあり、今後就農人口は減っていくでしょう。しかし、信頼されている作物を提供できる農家であれば、農地は集まるはずだと考えています。販路を開拓することで今後も経営を続けられますし、雇用も生まれます。ゆくゆくは産地を担える存在になりたいという覚悟が私にはあります。
そして、農業への熱い想いがある従業員とともに働いているため、彼らがこれから先成長した後にも活躍できるよう、伸びしろを感じられるような会社としての土俵を作っていきたい。
その一環として自社生産50ha超へ拡大させていく方針です。周囲からはなかなかに厳しい決断だと思われているようです。ハードな面においては出荷場・選果機械などの増設、投資といった面を考えなくてはなりませんが、資金繰りを試行錯誤しながら整え、新規の出荷場の建設を始める予定です。
銀行が貸してくれる金額を覚悟をもって借りれるかという代表の決断が、会社の伸びしろに繋がると感じます。資金を効果的に使うことで会社を成長させ、魅力的な会社にしたいと思います。

社員に対しても将来性を共有してもらえるよう、年に1回事業方針発表会を行って1年の振り返りとビジョンの共有、意思の統一を行い、従業員のモチベーションが高まるトリガーになっているのではないかと思います。

Q7.宮本さんご自身はどのような姿を目指していますか?

A.れんこんだけでなく、地域から信頼される会社へ。

「れんこんと言えばれんこん三兄弟だよね」と呼ばれるような業界から信頼される会社になりたいです。そして、地域でも「農業するなられんこん三兄弟だよね」と選ばれる存在にもなりたいです。


世間の農家へのイメージを払拭すべく、実家の農家を継いで有名なれんこん生産者として活躍されている宮本さん。インタビュー中も大きなチャレンジを成し遂げようとする静かな覚悟が感じられました。

宮本さん、今回は貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

(執筆:柴萌子/編集:ひのりほ)

スター農家クラウド編集部
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スター農家クラウド/Web編集メンバー

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