スター農家ラボ(ブログ)

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湯原ふぁーむさま突撃インタビュー

岡山・真庭から挑む!
地域を超えて成長する農業経営とは?


公務員から農家へ転身し、売上1億円突破に挑む、岡山県真庭市でサツマイモとミニトマトを栽培・加工・販売している湯原ふぁーむさま。

代表の針山真司さんは、栽培から販売まで自分で完結することができる農業に魅力を感じ、中山間地域で一歩一歩着実に成長を続け、売上1億円突破の思いを胸に農業に取り組まれています。今回は、針山さんに「中山間地域での経営戦略、体制づくり」についてお話を伺いました。

Q1.就農のきっかけを教えてください。

A.自分で完結できる仕事がしたい!

出身は大阪で、大学卒業後は約10年間、公務員としてハローワークで勤務していました。でも正直、対人・デスクワーク・電話対応などは苦手でした、性格に合っていなかったなと…笑

弊社は岡山県の真庭市という中山間地域に位置するのですが、ここは妻の地元です。妻と出会い真庭に遊びに行く機会が度々ある中で、ここで暮らしていきたい想いが膨らみ…結婚後すぐに移住しました。

移住前から職探しをする中で、農業でピオーネ栽培をやりたいと思っていました。ですがいきなり公務員だった人間が農業で生計を立てていくということに対して、やはり家族も抵抗があったようで…森林組合の面接を受け、そこで働くことにしました。
当時は林業での独立を構想していたのですが、1年勤める中で業界ならではの難しさを痛感し、改めて農業で経営をしたいという思いが膨らみ、家族の同意も得られました。

農業は、努力と頑張り次第でどこまでも可能性のある職種だと感じています。

Q2.品目選定において意識したことはありますか?

A.隙間を狙って売上を上げる。

就農当初はミニトマトのみでスタートしました。当初は1棟だけで精一杯でしたね。その後、一部大玉トマトにも挑戦しましたが、やはり栽培が難しく、同じ面積でもミニトマトの方が売上が高く、パートさんの手も確保できていたので、夏秋のミニトマトに集中することにしました。

その後はシイタケとサツマイモの栽培を始めました。この組み合わせだと年間作業がそこまで偏らないですし、通年での売上が見込めると思いました。また、県内では大規模にサツマイモを栽培している農家さんが少なく、スーパーの棚も他県産が数多く並んでいます。なので「地元産さつまいも」のポジションを狙うことにしました。クロスエイジさん主催の視察に参加して、そこで見て学んだことを真似して、収量を伸ばせています!現在の売上の柱はサツマイモですね。

実は…シイタケ栽培は、去年で終了したんです。売上はそれなりにありましたが、利益が残りにくかったですね。原材料費(菌床ブロック)が売上の半分程度を占め、そこから人件費や光熱費を差し引くと、利益が10%程度しか残らなかったです。将来的に売上1億円を目指す中で、投資余力を確保するためにも、サツマイモとミニトマトに集中する戦略を取ることにしました。シイタケ用であったハウスを現在はサツマイモのキュアリング庫として活用しています。

Q3.規模拡大の転機となった取り組みは?

A.事業再構築補助金をきっかけに「加工」へ挑戦。

サツマイモは貯蔵室が必要で、その貯蔵室を手に入れるために事業再構築補助金を活用しようと思いました。ただ補助金を活用するためには一次産業から加工業への展開が必要でした。もともと加工業にも興味があり、いつか始めようと思っていたので、当初の予定よりも早いタイミングで加工部門に着手することになりました。

タイミングはまだもう少し先だったのかなとも思いますが、現状赤字にはなっておらず、いずれはやるつもりだったので良かったと思います。HACCPへの対応など様々なハードルを早い段階で乗り越えられたことはプラスだったと思います。

来年からは近隣の加工施設をお借りできるので、より大きな規模で売上の柱として確立を進められるのではないかと思っています。

Q4.雇用を進める中で、組織づくりに対する考え方はどう変わりましたか?

A.縁を大切に、想いを共有することで「チーム」の基盤を固める。

2025年2月から、初めて社員を1名雇用し始めました。パートさんは上は70代から、下は高校生までと幅広い年齢層の方が働いています。ありがたいことに、各スタッフが紹介してくれ、主体的に動いてくれる人材に恵まれております。やはり縁故採用は強いです。

社員の子は元々流通業界にいた知り合いだったのですが、僕が人材を探していると話しをしていたところ、「農業をやりたい!一緒にやらせてください!」と言われて、タイミングも良かったので、社員として来てもらいました。約9か月で大まかな業務は覚え、任せられる部分も増えてきました。今はもちろん私も現場にいますが、ゆくゆくは任せられる人材をより増やす必要も生まれると思います。そこで躓かないように、社員の子には今後の事業におけるビジョンや目指す方向性、想いは常にシェアし、一緒に事業を形作る存在として意識しています。

働いてくれる皆さんにより良い条件を提示していきたい想いがあるので、法人化の動きは進めています。とはいえ社員雇用はまだ1名だけなので、最低賃金が上がる中、社員はどうすべきか。2人目以降の給与のベースラインはどれくらいが適切か、法人化に伴い、給与体系の整備についてはクロスエイジさんとも話しながら急ピッチで進めています。

Q5.価格交渉でのポイントを教えてください。

A.価格の根拠・理由・背景を納得してくれるような伝え方、論理立てた説明が重要。

もともとは、売れた分だけが売上になる委託販売の形で、道の駅やスーパーに出荷していました。自分で価格を設定できたため、価格交渉を行う必要はありませんでした。
その後、産直コーナーに並んでいた自社のサツマイモを、スーパーのバイヤーさんに評価していただき、バイヤーさんが求める「地域の商品で、ある程度供給力のあるもの」という部分に自社のサツマイモが該当し、2年前から相対取引の形へと移行しました。実際にバイヤーさんが自社まで足を運ばれ、品質や生産体制を確認いただいた上で、価格や数量を直接交渉しながら取引する形に変わりました。

価格交渉に関しては…苦手ですね…。取引先さんとの相性みたいなのは前提あると思うんですが、価格を上げてもらう時は特に言いにくくて…でも価格の根拠や理由、背景をちゃんと組み立てて話せば、バイヤーさんも一概にダメとはならないと思います。相手にちゃんと理解してもらえるような伝え方を考えておくことが重要だと思っています。

その頃から既にクロスエイジさんのコンサルティングを受けていたので、話し方や伝え方について、井上さんに毎回相談していました笑

Q6.クロスエイジはどんな存在ですか?

A.HOW TOを教えてくれて、一歩先のイメージを持たせてくれる!

真庭市は果樹の産地です。サツマイモはじめ露地作物が大規模に栽培されている場所ではないので、ベンチマーク的な経営をされている方は少なく、正直私も経営の進め方が分かりませんでした。そんな時クロスエイジ代表 藤野さんの本に出会いました。取り組みを開始したことで、経営の進め方がすごく実践的にイメージでき、行動まで落とし込めるようになりました。

この前も、離農される近隣の農家さんから相談を受け、ブドウの栽培を引き受けてみたんです。初めてだったのでそんなに大きな面積ではなかったのですが、担当させた社員にかなり時間が割かせてしまいました。本来、今作のミニトマトの作業を覚えさせたかったのですが何も進めることができず。クロスエイジさんにそれを相談したところ、目的が明確にないのならブドウは返すべきと…。とはいえ、数年契約してしまったので一概にお返しするわけにもいかず、どのように地域との協力体制を維持しながらも、自社にもメリットのある動きが取れるのか、今一緒に策を形作っているところです。

全国の農家さんとの交流の機会も企画してもらう中で、本質からブレず、集中するポイントを見極め、どう実行させるか。ここの背中を押してくれる存在はとてもありがたいです。

Q7.農業経営者としてこれからどんな農業を描いていきたいですか?

A.サツマイモの規模拡大、経営者として可能性を拡げる!

経営において利益を残すことを考えたとき、面積拡大はせず、いかに経費を削るかに目が行きがちですが、現状維持は面白くないと思っています。売上の天井をしっかり上げながら、適所に経費を使い、得た利益を次の投資に回す。これが私の目指す事業の在り方です。

根本に地域貢献の想いがあるというよりは、売上を上げることで会社規模が大きくなり、それが地域雇用や何か良い影響力をもたらせる存在になり、結果的に地域に貢献できる!という想いで頑張ることができています。

法人化も検討していますが、現状の規模からみるとまだ不要ですし、周辺も個人事業の方が多く、行政の方からもまだしなくてよいのでは?とアドバイスいただきます。ただ、私は法人化によって制度面のメリットがどうこうというより、法人経営者として、地域を越えて色々な方と出会い、見える視座・世界が広げやすくなることを期待しています。手続き含め面倒だなと感じる部分多々あるのですが…笑
挑戦できること、出会える人、この広がりが法人化を進める動機になっています。

今後のビジョンとしては、サツマイモの栽培面積を毎年1.5haずつ拡大、5年後には10haまでの拡大を描いています。土地はあるものの獣害対策や複数拠点を持つ必要性なども生まれてくるので、今シーズン終わったら、そこの計画づくりに注力します。

売上1億円突破は就農時からの目標です。私の農業経営を子供たちが今後も見ていく中で、自然と「農業をしたい」「湯原ふぁーむを継ぎたい」と思ってくれればなと思います。


針山さん、貴重なお話をありがとうございました。

スター農家クラウド編集部
スター農家クラウド編集部
スター農家クラウド/Web編集メンバー 鈴木

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