
売上約1.3億円を実現!中捨農場に学ぶ、品目選択と機械投資による農業経営の成長戦略。
北海道河西郡芽室町で、長いもやスイートコーンを中心に、小麦、ばれいしょ、キャベツなどを栽培する株式会社中捨農場さま。代表の中捨雅和さんは、品目の見直しや人材活用、機械投資を重ね、かつて4,000万〜5,000万円ほどだった売上を約1億3,000万円まで伸ばしてきました。
その成長を支えてきたのは、単なる規模拡大ではなく、収益性を踏まえた品目選択や、得られた利益を次の投資につなげる取り組みです。
今回は、これまでの経営の歩みや成長の工夫、失敗から得た学び、今後の展望についてお話を伺いました。
Q1.就農したきっかけと、農業を続けてきた理由を教えてください。
A.農家を継ぐことは自然な選択。作物づくりの面白さと、経営の難しさを感じながら続けてきました。
農家の長男として生まれ、中学生の頃から家の農作業を手伝っていました。農業が身近にある環境だったので、自分も農業をやることに特に抵抗はありませんでしたね。
農業を続けてきたのは、やっぱり作物を作ること自体が面白いからだと思います。ただ、農業は自分たちの努力だけではどうにもならないことも多いんです。病気や害虫の被害で収穫できなくなることもありますし、豊作でも市場に作物が多く出回れば価格が下がることがあります。機械なら壊れても修理できますが、作物は一度駄目になると、その年の収穫を取り戻すことはできません。だから、良い作物を作ることはもちろんですが、それだけで経営が成り立つわけではないという難しさも感じてきました。
そうした中で、栽培方法だけでなく、作物の組み合わせや収益性も考えながら、少しずつ経営のやり方を変えてきました。
Q2.売上を約1億3,000万円まで伸ばしてきた中で、どのような工夫をしてきましたか?
A.収益性を考えた品目転換と規模拡大。得られた利益を次の投資につなげてきました。
以前は小麦やビート(てん菜)、大豆などの畑作物と長いもを中心に栽培していました。ただ、従来の品目だけでは、十分な所得を残すことが難しい面もあったんです。
そこで、長いもの面積を増やしたり、収益性の高い品目に挑戦したりするようになりました。
かぼちゃも栽培していましたが、手間が少ない一方で収益性は物足りませんでした。それなら、キャベツやさつまいもなど、より収益を見込める作物に取り組もうと考えたんです。
特に大きかったのが、スイートコーンの面積拡大です。もともとは家族4人で作業していたため、栽培面積は1haほどでした。JAの労働支援をきっかけに、学生や派遣スタッフなどの人材を活用するようになり、4haまで拡大できました。その後、収穫機械を導入し、現在は約8haまで増えています。スイートコーンを増やしたことは、土づくりの面でも良い効果がありました。イネ科の作物を輪作に取り入れることで地力が維持され、その後に作る作物の収量にも良い影響が出てきたんです。
また、長いもの面積拡大では相場にも恵まれ、徐々に利益が増えるようになりました。そうした状況が7年ほど続き、2015年頃に経営を引き継ぎ、2017年には法人化しました。
法人化後も機械化を進め、収益を増やし、その利益を次の設備投資につなげることで、経営を成長させてきました。
単純に面積を増やすだけでなく、今ある農地で何を作るか、どのように収益を高めるかを考えることが大切だと思っています。

Q3.人手不足や作業効率の課題に、どのように対応してきましたか?
A.人材活用から機械化へ。家族経営の強みを生かしながら、生産性を高めてきました。
最初は人を増やすことで作業面積を広げてきました。ただ、人によって作業能力に違いがあり、予定どおりに進まないこともあります。
そこで、機械でできることは機械に任せようと考えるようになりました。2015年頃には、登場して間もないGPS自動操舵システムを導入しました。長いもの収穫や播種、畝切りなどに活用し、作業精度の向上や疲労の軽減につながっています。以前は暗くなると精度が落ちるため作業を控えていましたが、機械の導入によって夜間も作業できるようになりました。スイートコーンも、人材の確保で面積を広げた後、収穫機械を導入することでさらに拡大できました。
また、うちは家族経営ならではの強みもあります。両親や妻が農場を支えてくれていますし、2026年4月からは息子も就農しました。家族だからこそ、いざというときに阿吽の呼吸で動ける良さがあります。弟は農業機械の整備会社を経営しており、義父は土地改良などを手掛けています。周囲の協力を得られることも大きな強みですね。
今後、雇用を増やすには冬場の仕事づくりも課題です。長いもの洗浄や箱詰め、じゃがいもの袋詰めなどを自社で行うことで、年間を通じた仕事の確保にもつなげたいと考えています。
何でも機械化するのではなく、人と機械それぞれの役割を考えながら、生産性を高めていくことが重要だと思います。

Q4.これまでの失敗や経験から、学んだことはありますか?
A.品目の収益性だけでなく、作業の組み合わせや土づくりまで考えることが大切です。
規模を拡大して農地が増えたとき、何を作ればよいのか分からなかったことがありました。手間をかけずに面積を広げようと大豆を作ったこともありますが、引き受けた農地の状態が悪く、思うように収穫できなかったんです。周りでは大豊作なのに、自分のところだけ取れなかったこともありました。その経験から、まずは土づくりが大切だと学びました。農地を引き受けても、すぐに良い作物が取れるわけではありません。畑の状態を改善するには何年もかかります。
うちでは、小麦やスイートコーンなどのイネ科の作物を輪作に組み込み、小麦の収穫後には緑肥を作ったり、堆肥を入れたりしています。複数の品目を組み合わせることは、地力の維持や土壌病害のリスクを抑えることにもつながります。
一方で、品目を増やしすぎたことも反省点です。
以前は枝豆を7年ほど栽培していましたが、JAの収穫スケジュールに合わせる必要があり、キャベツなどほかの作物の作業と重なることがありました。天候による収量の変動も大きく、7年間で十分に収穫できたのは3回ほど。そうしたことから栽培をやめました。
ただ、品目を減らせばよいというわけでもありません。複数の作物を組み合わせることで、天候によるリスクを分散できますし、土づくりにもつながります。
また、青年部で知り合った農家や農業高校の同級生、肥料会社などから情報を得られることも、栽培技術の向上に役立っています。
うちでも、長いもは10a当たり6t、キャベツは12t、ばれいしょは3.5tなど、品目ごとに収量目標を設けています。収益性だけでなく、作業時期や土壌への影響、安定した収量を確保できるかまで考えて品目を選ぶことが大切だと思います。
Q5.今後のビジョンを教えてください。
A.洗浄・選果や販路の工夫で収益性を高め、地域の農業を支える事業にも挑戦したい。
農地を増やせれば、面積拡大は売上を伸ばす一つの方法です。ただ、いつでも農地が出てくるわけではないので、今ある作物の付加価値を高めることも必要だと考えています。
例えば、長いもは現在JAで洗浄・選果してもらっていますが、流通経費が大きいことが課題です。さつまいもも、これまでは土付きの原料に近い形で出荷していましたが、単価を高めるために洗浄機を導入しました。今後は長いもについても自社で洗浄できるよう、洗い場や貯蔵設備への投資を検討しています。こうした取り組みは、販売単価の向上だけでなく、冬場の仕事づくりにもつながります。
また、長いもでは「ネバリスター」という品種にも挑戦しています。従来の長いもより作業負担を軽減でき、歩留まりの改善も期待しています。
販路についても、JA出荷だけでなく、生産者ネットワーク「なまら十勝野」を通じて、自分たちで価格を決める販売にも取り組んでいます。さらに、地域では農家の戸数が減る一方、一戸当たりの経営面積は拡大しています。そうした中で、今後はさつまいもなどの収穫支援や集荷、選果の支援にも可能性を感じています。ただ、そのためには機械や人材への投資も必要です。まずは自社の生産体制を整えながら、地域の需要に応えていければと思っています。
また、高温への対策として、灌水設備の整備や暑さに対応した品目の組み合わせも考えています。一方で、何でも自社でやればよいとは思っていません。加工や飲食にはそれぞれ専門の事業者がいます。
農業法人として、まずは良い作物を安定して作ることを大切にしながら、販売先や地域の事業者と連携して価値を高めていきたいですね。

中捨農場の成長を支えてきたのは、品目の見直しや人材活用、機械投資、そして経営の土台となる土づくりです。収益性だけでなく、作業効率や品目の組み合わせも考え、得られた利益を次の投資につなげてきました。
今後は洗浄・選果設備の整備や販路拡大、地域の農家への支援など、さらなる成長も見据えています。
中捨さん、貴重なお話をありがとうございました。









