農福連携で「農業の持続×障がい者雇用」の
Win-Winな関係を実現!

大規模農家が就労継続支援事業所を立ち上げるメリットもご紹介

          

株式会社SANCYO/ONE GOさま(@福岡県)


「生きづらさや働きづらさのない世の中を創る」を経営理念に、障がいがある方の支援を行っている株式会社SANCYOの代表・嘉村裕太さん。

SANCYOとして就労継続支援A型事業所を立ち上げた嘉村さんに、農福連携を行うに至った背景や、魅力についてお伺いしました。

■株式会社ONE GO設立にいたるまで

農業と福祉、双方の課題を解決するための第一歩

株式会社SANCYOは、「生きづらさや働きづらさのない世の中を創る」を経営理念に、障がいがある方の支援を行っています。
SANCYOとして就労継続支援A型事業所・TANOSHIKA FARMを開所した当時から、地域に事業所は多く存在していたのですが、農業の仕事を提供するところは1箇所しかありませんでした。A型事業所が提供する仕事といえばチラシ折りのような内職作業のイメージが強く、農業に特化した事業所を開所することに対して、周囲からは「うまくいかないのではないか」とよく言われていました。

開所初年度は利用者の確保に苦労しましたが、1年間で10名の利用者が集まり、「農業に関わりたいが、農業の仕事がある事業所がない」という声が確かに存在することが分かったのです。
その翌年からは、提供できる仕事は全て農業であることや、さまざまな農家さんや作物に関われることで注目を集め、TANOSHIKA FARMの利用者は増加しました。

そんなある日、以前からお取引をさせてもらっていた築島農園さんから「後継者がいないため事業承継をしてくれないか?」とご相談をいただきます。私は築島さんがこだわりを持っていちご生産に取り組まれていたことを知っていたので、当初はその技術を引き継ぐことに不安を感じていました。

しかし、農家側の高齢化や後継者・人手不足、福祉側では障がい者の雇用機会の不十分さや賃金の低さなどの課題を、双方が協力することで解決できるのではないかと思ったのです。そして「農業の持続×障がい者雇用」を目標に掲げ、築島さんらとともに設立したのがONE GOです。

■農福連携の事例

作業を細かく切り分け「ここをお願いしたい」を明確にすることが大切

TANOSHIKA FARMでは、農家さんの「人手が欲しい」ニーズと、就労支援事業所の「仕事を確保したい」ニーズを同時に満たすことに成功しています。
特に作業工程を細かく切り分けて管理している農家さんは、各作業の性質をよく理解できていることから「どこをお願いできるか」が明確で、就労支援への委託や障がい者雇用との相性が良いと考えています。

▼ニラ農家様にて
収穫・皮剥ぎ・結束など人手が必要される工程を行う様子

■農福連携のメリット

頭数を増やすだけの「人材不足の解消」ではない

農福連携における農家側の最大のメリットは人材不足の解消ですが、これには二つの側面があります。

一つの側面は、多様な人材を戦力にできることです。
私たちは農家さんへ営業に伺う際に「障がい者雇用は、パートの主婦さんや外国人実習生の受け入れと横並びに考えてほしい」とお話ししています。
持っている障がいや適性など、障がい者の方も十人十色であり、当然ながら企業との相性の良さは人それぞれです。障がい者の方を一括りに考えるのではなく、自社ときちんとマッチする方を採用できれば重要な戦力となります。

▼玉ねぎ農家様にて
繁忙期に玉ねぎを網に詰める作業の様子

もう一つは、農福連携をきっかけに若い世代が農業に興味を持ってくれるという側面です。
弊社の採用面接では、志望動機として「障がい者雇用を行っていることを魅力に感じている」と話す応募者が来られます。今の若い世代には、人をどのように扱うかなど企業の姿勢に注目し、障がい者雇用をしていることをプラスにとらえる人も少なくないようです。

■大規模農家がA型事業所を立ち上げるのに適している理由

提供できる仕事の多さや、「農業」というコンセプトの明確さ

まず、仕事を提供できるほどの規模であることです。営業力を持っているA型事業所は未だ少なく、仕事の確保に苦労しているのが現状です。大規模農家であれば就労支援にお任せする仕事を手配できます。実際に、内職作業ばかりでなく農作業を提供できる事業所のほうが人は集まりやすいですし、農業をやりたい利用者が集まっているためいきいきと働いています。

また、農業・IT・清掃……のようにいくつもの業種の仕事がある事業所より、何か一つに特化していてコンセプトが明確なほうが運営もしやすく、営業の場面においても「農業に特化した事業所」と言い切れるほうが訴求力も高くなります。地域に根ざした仕事であることや、業界で働く方の人間性が似ていることなど、相通じる部分もあり、農業と福祉の相性は非常に良いと考えています。

▼キノコの加工会社様にて
株を包丁でカットする様子
包丁を日常的に使用する人が働いています

■株式会社ONE GOにおけるチームの在り方

障がいの有無に関わらず、チームの仲間として一緒に働く

ONE GOのスタッフからは「障がいのある方と働くことに対して特別な思いはなく、あるとすれば、新しい発見や目標、それを達成できたときの成功を一緒に経験し、喜べることが嬉しい」という声をもらっています。

月に一度、障がいのある方とは面談で仕事の進捗や体調面などを確認しますが、作業において特別扱いすることはありません。繁忙期も夏の暑い時期も、同じチームの仲間として一緒に働きます。農作業の大変さを理解した上で働いている方々なので、しっかりと戦力として活躍してくださっています。

▼築島農園時代
シーズン終了後にいちごの苗を切り取る作業の様子
ご夫婦だけでは1週間以上かかる作業に、
10名以上の事業所利用者が参加したことで2~3日で完了できました

(執筆:橋本恵梨奈/編集:ひのりほ)