有限会社栗原農園さま突撃インタビュー
農業を継承して新たな挑戦へ!
「ネギキムチ」栗原農園オーナーに迫る
2004年に設立された水耕栽培のコネギを中心にサラダ野菜や米などを栽培・製造する有限会社栗原農園様。 代表の栗原玄樹さんは、料理人を目指されていた中で、飲食店のアルバイト経験を通して就農を決意。実家で営む栗原農園を継いで現在に至ります。
最近ではコネギをアレンジした6次化商品「ネギキムチ」で人気tiktokユーザーと共同でビジネスを展開中。今回はそんな栗原さんに実家の栗原農園を継いだ際に覚悟したことや売上を伸ばす経営にあたって着目したポイントを教えていただきました。
目次[非表示]
Q1.就農のきっかけを教えてください。
A.学生時代の飲食店でのバイト経験を通して農業に興味を持った。
元々私は飲食業界を目指していて、高校卒業後は料理学校に1年間通っていました。在学中、野菜へのこだわりを売りとしているレストランでのアルバイト経験を通して農業に興味を持ちました。というのも、実家が送ってくれたバジルを使ったパスタをお客様に提供したことがあり、信用のある農家の素材を使った料理をお客様にお届けする過程を間近で見て、生産を支える農家の魅力に気づいたことが農家を目指すきっかけでした。
19歳ながらに、人生の岐路として農家になることを考え、多くの人に相談しました。
結果、農家になるために農大へ進学。
料理人になる道を蹴る判断でもあったので、覚悟は大きかったです。農大への進学と同時に実家へ就職し、実家からもらう給料を学費に充てる形で、平日は学校、土日は実家を手伝いつつ生産ノウハウ学ぶ生活を2年間続けました。
その後は、一旦実家ではなく農業関係の会社に就職するつもりでしたが、父親が腰を悪くしたために、そのまま実家で働くことになりました。就農時に「30歳に事業継承する」という約束をしていたため、10年後を見据えて、すべきことを明確化しながら毎日仕事をしていました。仕事をしながら外部の方々との関わりを持つためにも交流会や地域のボランティアなどに参加するなど、アクティブに活動していました。意識高い系でしたね(笑)。とにかく30歳になった時に周りに遅れをとりたくなかった。父親がタイムリミットを決めてくれたことは、私にとって非常にありがたかったですね。
就農当初の農地面積は6反ほど。売上は6,000万円で、従業員は今の半分の10人ほどでした。1人あたり2,000万円の売上を出すためにも、決算書を読みこめるように経営の勉強を熱心にしました。
Q2.作業効率化のために工夫されていることは?
A.0→1の思考で考える。
基本的に面倒くさい・時間かかるという感覚から改善をとる流れです。
播種の方法・ハウスのカーテンの付け替え・事務作業諸々、父親の代ではしていたことも、基本的には作業は「なくす」という思考から最低限すべきことを逆算しています。
もちろん作業によってはすぐ切り替えられないこともあるので、最適な方法を調べつつ、父親の意見も聞きながら、徐々にすり合わせていく感覚です。
とにかく、ただ苗を運んだり、請求書を封筒に入れるといった作業に膨大な人件費・時間を割きたくないという思いが、改善行動に繋がっています。
Q3.どのように販路を開拓されてきたのでしょうか?
A.飲食店の方々のニーズを把握した提案を心がけ、5~10年かけてじっくりと関係性を深める。
飲食店が使いやすそうな食材の傾向を把握していたため、彼らのニーズに合う野菜を栽培していました。飲食店でのアルバイト経験がそこで活かされていましたね。私自身も外食をしながら店員にアプローチして、カウンター越しに会話しつつ仲良くなりながら販路を開拓するような行動もとっています。接客で忙しくない時間帯を狙うなど工夫していましたね(笑)。店長やシェフと仲良くなるとそこから横のつながりも紹介してもらえました。当時はまだ農業界では若手だったこともシェフと仲良くなるためのアドバンテージになったのだと思います。若者が農業について熱く語っているのは、珍しいですし。
また、飲食店の厨房の発注パターンや考慮すべき事情などについても少なからず知っていたので、かゆいところに手が届くような契約・配送のパターンを提案。 年間安定価格での出荷に努めながら、飲食店側の経費計算の負担を考慮しながら食材を配達しました。「相手が儲かるような提案をする」ということが、販路開拓の肝なのだと実感しています。
Q4.6次化商品「ネギキムチ」開発のきっかけを教えてください。
A.社員がコネギをキムチとしてアレンジ。「これはいける」と確信した。
元々ドレッシングやタレなどの加工品にチャレンジしてみたいという思いがありました。とはいえ、個人で試行錯誤をしていたのですが、いまいちしっくりくるものが無く……。そのような中でコロナ禍で飲食業を辞めて農業に興味を持った知り合いが栗原農園で働くことになったのですが、余ったコネギを浅漬けとキムチにしてアレンジしてくれたんです。「コネギが活かされている!」と感じたうえ、韓国ですでに定番のネギキムチは日本でマーケットシェアを獲得できるかもしれないと思い、商品化に至りました。オンラインで販路を開拓していたところ、tiktokでバズっている「キムチの家」と知り合い、共にビジネスを始めることに。様々な料理に合うので、多くの飲食店さんへ向けて営業させていただいています。
Q5.組織づくりのために取り組んでいることを教えてください。
A.従業員が自ら考えて動けるようにコミュニケーションを工夫する。
現在は正社員1名、外国人技能実習生4名、パートさん20名、役員2名の編成となっています。
基本的に現場で困りごとがありそうだったら、一旦は自身で解決策を考えてもらう状態を作るようにしています。その答えをもとに、ここはこうしてもいいかもね、Aさんが言ってたことも良いから、掛け合わせてみようか。といった誘導を私が行うイメージです。
問題の背景を理解し解決策を挙げてもらうことで、自分たちで言ったことは責任を持って行動してもらえるようになります。チーム編成もまとまりを保つことができるよう、1チーム7名以下にして、相互にコミュニケーションをとりやすい環境を作るようにしています。
また、社長に相談することを躊躇してしまうようなピリピリした雰囲気は出さないようにしています(笑)
商業高校と共同で商品開発を行ったご縁などもあって、栗原農園に入社したいと応募してくれた子も来年から入社します。
有給全消化とは徹底しており、当たり前のことを整備しておくこと、地元で幅広く認知してもらえるような会社であること、一経営者としての姿をアピールしていくことは大切にしています。
Q6.クロスエイジはどんな存在ですか?
A.壁打ちできる相手。
クロスエイジさんはコンサルティングのみならず仕入れや販売も行っているため、商売に関する知見が備わっていて、納得感があります。毎回藤野社長には気兼ねなく相談できており、非常に助かっています。
Q7.今後のビジョンを教えてください。
A.ハイペースに進み続ける。
ネギキムチを中心とした加工品を強化し、商品展開を広げていきながら売上を増やしていきたいと思っています。その先には自社の米も6次化できたらと考えています。自社の基盤をしっかり整え潤うことが、地域を盛り上げることに繋がると考えます。
マイペースな積み重ねも重要ですが、これまで常にアンテナを張ってハイペースに進んできたことで、いろいろな話が舞い込んできて楽しいと感じる経験が多かったです。まだまだやりたいことがたくさんあるので、とにかく生き急いでいきたいです(笑)
元々は料理人を目指していたものの、アルバイトをきっかけに就農を決めた栗原さん。
効率化を徹底する中で従業員と共に自ら考えて動いていこうする創意工夫を大切にする姿勢や、ストイックで行動的な姿勢、tiktokなどの新しい文化を積極的に取り入れる柔軟性が印象的でした。
栗原さん、今回はお話しいただきありがとうございました。
(執筆:柴萌子/編集:ひのりほ)