【スター農家による農業×福祉の連携強化】
休眠預金活用事業を通して社会課題を解決する取り組みとは?
昨今、市町村では「雇用機会が少ない」「雇用を生み出す場が少ない」など、雇用問題が深刻化しています。
株式会社クロスエイジ(以下、クロスエイジ)は、「大規模農業経営の安定した人材確保と経営」「障がい者の農業現場での活躍」ができる地域や社会を目指すべく、休眠預金活用事業における資金分配団体として、農福連携推進のために活動する農家の支援を行っています。
具体的には、スター農家による就労支援事業所の開設を促進・サポートすることで、雇用機会に恵まれない地方の障がい者が農業分野などで活躍できる仕組みづくり、彼らが継続的に農業分野で活躍できる仕組みづくりです。この取り組みを迅速に推進するため、このたび休眠預金等活用法に基づく資金分配団体への申請を行い採択されました。
休眠預金活用事業とは
休眠預金活用事業とは、2009年以降の取引から10年以上金融口座に預けたままの預金を、社会課題の解決や民間公益活動の促進のために活用するという2019年に定められた法律に基づく事業です。
2022年秋にクロスエイジは、休眠預金の活用を目的として設立された団体である一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)に農福連携の事業計画を申請。JANPIAより分配された2億円ほどの資金を地域の農家のプロデュースに活用しています。
休眠預金事業活用事業のきっかけ
休眠預金活用事業のきっかけは、農家の人手不足です。外国人技能実習生を雇っている農家が多かったのですが、コロナ禍で外国人技能実習生を雇う農家の雇用状況が厳しくなりました。そこで、障がい者の協力を検討したところ、都市部に比べて働き口が少ないことが課題であった地方の障がい者の方の労働力を確保でき、農家と障がい者の双方にとってメリットとなりました。
さらに、クロスエイジと関わりのある企業や農家に影響を受けたのもきっかけのひとつです。コンサルティングを提供する企業が以前から障がい者雇用をしていましたが、その企業が農業に参入するときも野菜の選別作業に障がい者を採用していたので、より農福連携の取り組みを広めたいと思いました。
また、身近に障がいを患っている家族を持った農家がいて、彼らの「障がい者雇用ができる農園を目指したい」という気持ちに共感し、株式会社クロスエイジとして事業の公募に申請しました。
休眠預金事業活用事業に携わる団体
現在、クロスエイジは休眠預金活用事業を通したサポートとして、6団体を採択しています。以下6団体においては、就労支援事業所の開設の促進・サポート、資金調達ノウハウ等の伴走サービスも提供しています。
株式会社春口農園
独自で就労支援施設を設立予定。働く場所や福祉サービスを提供していきます。
株式会社なかせ農園
以前から障がい者雇用をしており、福祉サービスも行っていました。さつまいもの出荷のお手伝いや、繁忙期に合わせて地域のさつまいも農家のもとへ障がい者の方を派遣していきます。
有限会社耕佑
障がい者の方のための事業所を設立予定。所有している農場や地域の食品メーカーに派遣していきます。
株式会社常笑ファーム
小学生~高校生向けの放課後デイケアサービスを行っており、農業にも参入する予定。大人になってからすぐ働けるように、就労支援所を設立していきます。
株式会社山都でしか
有機農業が日本一の熊本県山都町で、有機野菜の出荷場をつくり、障がい者の方々を雇用していきます。
一般財団法人みらい創造財団「朝日のあたる家」
地域の農家さんの繁忙期に合わせて、障がい者の方を派遣していきます。農業の課題に特化した取り組みを行っていく予定です。
休眠預金事業活用事業を行う背景
この事業は障がい者の働き口を増やし農家の人手不足を解消すること、それを通じて地域の活性化、ひいては社会貢献に繋げることを目的としています。休眠預金活用事業を通じて農福連携を行う背景は以下の3つです。
① 農家の人材不足
高齢化や担い手不足による慢性的な人手不足に加えて、コロナ禍で外国人人材の確保が困難になっており、農家の人材不足は加速しています。
② 物価高騰による農家の所得の低下
原油価格、物価高騰に伴う農薬、肥料、燃料代、最低賃金、輸送費、包装資材の値上げが相次ぎ、結果として農家の所得は低下しています。
③ 障がい者の就労機会の地域差
都市部に在住している障がい者に対しては9割程度の雇用枠がある一方、
地方に在住している障がい者に対しては1割程度の雇用枠しかないという就労機会の不均衡があります。
このような背景から、当社ではスター農家による”福祉部門の内部化”を進めることで、
「大規模農家の安定した人材確保と経営」と「障がい者の農業現場での活躍」の両立を目指しています。
まとめ
クロスエイジは、販路開拓・商品企画・経営支援の3つの側面から農業経営者をサポートし、2005年の創業以来200軒を超える「“スター農家”=売上5,000万円を突破し、成長を続ける農家」を輩出してまいりました。
私たちは、“スター農家”の活躍を支えることで、若い世代や他業種従事者にとって「農家」が仕事を選ぶ際の魅力的な選択肢のひとつになる、そんな世の中の実現を目指しています。今後もこの休眠預金活用事業を通じて地域活性へ働きかけ、クロスエイジのコンサルティングサービスの一環としていきたいです。
(執筆:吉野朱美/編集:柴萌子 ・ ひのりほ)